M先生来る

3年前、アンカラママの家でどんぐりワークをやった、イスタンブールのM先生が、またアンカラママの家にやってきた。

「新しい学校で、先生たち対象にどんぐりの講演会をすることになったんですが、期間が2日間もあるんです。いろいろ資料を用意しなくちゃならないんだけど、正直、どうやったらいいんだか・・」

M先生は、私立小学校の先生である。3年前、1年生を受け持ってから、3年間受け持ちの子とどんぐりをやってきた。(トルコでは、通常1-4年まで同じ先生が担当する)

「掛け算表暗記してないのに、うちの生徒は掛け算の問題も割り算の問題もやっちゃいます。これだけでも、トルコに広めなければならない!」と鼻息あらく、他の学校に出向いてどんぐりを説明したりしたが、反応はいまいちだった。

M先生は、三角試算表が大好きで、九九を教えるのにこれしか使わなかった。

M先生のクラスでは、公務員試験の数学の教養問題を解く子達が現れた。

保護者は大満足である。

結果、何が起こったかと言うと、

同じ学年の他のクラスの保護者が、学校にクレームを入れ始めた。どうしてうちのクラスでは、日本式の新しい教育とやらをやらないのか。

いろいろ思惑が渦巻き、クレーム対応を嫌った学校が、M先生をクビにした。

あまりの事態に、M先生は自分の私物も学校に置きっぱなしなのだという。

「近々取りに行きますよ。どんぐり作品の写真とか、必要だし・・」

それで、新しい私学に移ることになったのだが、そこは幼稚部から高等部まで、先生が500人くらいいるのだという。

「先生方が半分来るとして、250人くらいですよね。いろいろ突っ込まれても答えられるように、どんぐりのプロフェッショナルになりたいんです!!頼れるのはアンカラママ、あなたしかいません。お願いします!!」

・・いや、無理だし・・

と、言いたいのだが、仕方がない。アンカラママが頭を飴のようにぐしゃまぜにして翻訳せぬ限り、トルコのどんぐり会員にはどんぐりの資料が1行たりと伝わらないのである。

「このごろトルコブログのアップも滞っていますね。しっかりしてくださいよ」

この先生、悪気はないのだが、翻訳はちっとも手伝わないくせに、できたものを要求ばかりする調子のいい人なのだ。

そして、これほどどんぐりにほれこみ、クビにされても、どんぐりをあきらめない先生も、他にいない。

保護者相手と違い、指導者相手のワークショップであるから、間違って伝わると、そのまま広がってしまう。

トルコブログに載せてある、どんぐり理論を1行づずつ取り出し、解釈を細かく聞いていく。やはり、ところによっては、理解が浅く1面的であるので、具体例など出し、できるだけ実感して、M先生のものになるように、サポートする。
アンカラママが一生懸命説明していても、M先生が実感していない場合、アクビをするので、ある意味わかりやすい。

アンカラママが、特に力を入れたのが、視考力の説明である。

「絵図を参考にして頭で考えることだけが視考力を使うことではないのです。目の前にあるものや絵図を使って視覚イメージを自在に変化させることで、あらゆる可能性を瞬時に当てはめるのです。視覚イメージを使うので、エネルギー消費は最小で反応は最速、処理能力は最大です。・・・考えるのでなく、絵図を動かしたり変形させたりして、その形から発見するのです。頭の中で理論的に考えるのではありません。理屈で考えないので格段に速く、理屈や理論では到達できないことも簡単に見えてしまいます」(新・絶対学力より)

M先生、アクビをしている。分からないのだ。

その日のワークはそれで終わり、M先生はホテルに帰った。アンカラママは、視考力の使い方の、根本が伝えれていない気がして、どうにか伝える方法はないか、考え続けた。

翌朝、M先生に、5MX02をしてもらうことにした。

M先生は4MXまでしか知らなかったから、5MXの問題をやるのははじめてである。

<5MX02>
右隣(みぎどなり)に住んでいるガメラ君は昨日UFO(ユーフォー)2機と
ヘリコプター1機を530億円で買いました。
左隣(ひだりどなり)のギャオス君は同じUFO1機とヘリコプター3機を340億円で
買いました。評判(ひょうばん)が良いので、明日、僕はUFO5機と
ヘリコプター5機を買うつもりです。何円用意する必要があるでしょうか。

M先生、UFOとヘリを2-1と1-3の組み合わせで描いた。

しばらく、連立方程式の理屈で絵で解けないか試していたが、結局式で解いてしまった。

アンカラママ「おや、駄目ですね。うちの学校では、2年から4年までのクラスでこれやったけど、2年でも分かるコがいっぱいいましたよ。子供が見て分かるものでなくっちゃ」

M先生「絵を見て考えたんだけど、解き方がわからなくて・・」

アンカラママ「僕はUFO5機とヘリコプター5機を買うつもりです。の絵がありませんから、ここ描いてください」

M先生、絵を加え、「おっ」とつぶやき、マルで囲み始めた。「できましたね、いやあ、簡単でした。ふむう、自分はまだまだですねえ」

アンカラママ「昨日の視考力の説明を、もう一度しますよ。先生、マルをいろいろ書き換えて、試してたでしょ。あらゆる可能性を瞬時に当てはめるのです。のところですね。これ、いちいち計算して試してたら大変ですよ。でも、絵なら簡単ですね。つまり、エネルギー消費は最小で反応は最速、処理能力は最大です。ということなんですよ。」「頭の中で理論的に考えるのではありません。理屈で考えないので格段に速く、理屈や理論では到達できないことも簡単に見えてしまいますのところね。先生、絵を見るとき、最初から確信してやったわけじゃないでしょ。理論的に考えなかったのに、目が教えてくれたんですよ。理屈や理論(連立方程式)を超える解法が見えたんです。ヒラメクために、我慢して、絵を動かしたり、見続ける練習をやるのが目的です」

M先生、手速くパソコンに入力している。「なるほど、素晴らしい。これ、ぜひ講演会で使わせていただきますよ。他の先生方に、問題を解いてもらって」

話は、来場者のアクティビティに移り、どんぐり問題をやってもらうために、問題を選んだりした。

アンカラママ「そうだ、日本のカナモリ先生がやってるんだけど、来場の先生方に、これやってもらってください。宿題体験ですよ。大量宿題があると、うまくいかないもんでね」

1 あまりのある割り算100問を、時間を計って暗算してもらう

2 利き手でない手に手袋を2枚はめて、筆記体のbをノート1ページ書いてもらう(漢字のかわり)

「5人ずつ指名してね、他の先生方の前でやってもらうんですよ。汚い字は消してやりなおし。間を空けて書いてきたら、注意して。そうやって、どんな気持ちになったか、あとで言ってもらうんです」

「それはいいアイデアですね。教育の名で、子供の将来を暗くする権利は、誰にもないのですからね。いろいろ考えが浮かんで来ましたよ」

2日にまたがり、合計10時間のどんぐりワークをして、M先生は帰った。

講演会は土日なのだが、アンカラママは9月から週末に子供向けカルチャーセンターでどんぐりの講座を受け持つことになっているので、参加できないのである。

講演会まで2ヶ月あるので、電話やメールで準備を手伝うことにした。

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