お嬢様のどんぐり 2

2年生のお嬢様、Hちゃん。

黒人の家政婦はやめて、中央アジア系の家政婦さんに代わっていた。

「わたしが選んだの。日本人に似てたから♪」Hちゃんは日本ファンなのだが、7歳でこんな環境で育つと、算数力は難しい。

「今日は巻尺を持ってきたよ。Hちゃんの身長が知りたくってね。自分の身長、知ってる?」トルコの学校では、身体測定がない。
「知らないわ・・・」手のひらで、頭から測ってみようとするHちゃん。手のひらで、およその長さをはかる、というのは1年の課程に入っている。
「さあね、30センチかしら・・・」
「30センチは、目の前にあるものさしの長さですねえ。」
「あ、そうなの。」今度は、ものさしで座ったままの自分を測ろうとする。
「100センチくらい・・・?」
「じゃ、壁に行って、測ってみようね。」実際に測ってみると128センチだった。
「この目盛、読んでみて」
「え・・ひゃく、ええと、わたし、読めないわ。」
そこへ、お母さんが様子を見にくる。「H、これ、読めないの?」
「学校でまだ習ってないもの」
たちまちお母さんの顔が険しくなる。
アンカラママ「じゃ、ちょうどいいんで、今日予習をしますね」

128を説明するアンカラママ。
確かに、2年生の算数では20から100までの加減しかやらない。
しかし、3年になったら、1000までの四則計算が入ってくる。
1000までのイメージがないまま、筆算のテクだけを教わるのはまずい。

アンカラママ「じゃ、アンカラママの身長はどれくらいでしょうか。予想してみてね」
Hちゃん「そうねえ、うーん、千 とか・・?」
アンカラママ「1000センチって、このマンションの1階から3階くらいの長さですねえ。」
Hちゃん「え、そうなの」
アンカラママ「測ってみよう」

買い物も、カード支払い。
日常の買い物は、家政婦さんがしているかもしれない。
「今月は電気代が160リラも来たぞ」「ギャッ」みたいな会話を聞くチャンスもない。

トルコの100リラは日本円の15000円くらいの感覚にあたり、子供には大金だから、触ったことがない子も多い。
あの家政婦さんに、一人っ子のお嬢様と人生ゲームでも遊んであげてって頼もうかな。

かわいいHちゃんの写真が、トルコブログの左側面にアップ中です。
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アスペルガー物語

最近読んだ中では、おすすめ。

奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」

普段は明るく穏やかだが、時間に極端に細かく、予定が変わると激怒する小学生。そんな息子が実は発達障害だということが分かった。現状と対処法を探るうちに、父親の「僕」もそれまで意識しなかった自らの症状に気が付いていく――敏腕テレビ制作マンが、息子と二人三脚の「発達障害との戦い」を描くノンフィクション。

http://gendai.ismedia.jp/category/okumura

長いですが、ネットで無料で読めます。途中で連載終わっちゃったみたいです。



見えることは幸せ?

重度自閉症のボランくんは、「おりこうさん」でおとなしく座ってるこどもだった。

すぐに、意識が落ち込み、ボーっとしている時間が長いのだった。

周りは、そのときボランくんは賢く授業を聞いているのだと誤解していた。

他人があいさつしても、返事はおろか、何の反応もなかった。

アンカラママが来てから、ボランくんは周りが見え始めたように思う。

最初は、本の写真・絵の指差しは、わずかに6種類しかなかった。(乗り物と公園の遊具)

それが、今ではほぼ全ての写真を指差して、聞いてくるようになった。

いろんな人物に興味を持ったり、お店など、最近見たものと関連あるものを思い出し、そのときの状況を代わりに言ってやると、満足する。

公園で、知らない人がいても、相手をしてもらいたくて、コンタクトをとろうとする。話しかけてくれたおじさんのひざに、甘えて頭を置いてみたり。小さな女の子が、手をつないでくれたのがよほどうれしかったのだろう、翌日、同じ公園でその子の姿が見えないと、何度も何度も探し、悲しそうに「ナー」と嘆いた。

いろんな大人が、「ボラン、変わったねえ!」と驚いた。

しかし、それは、ボランくんが午前中を過ごしている学校と言う場所、教室という場所が見えてしまうことだった。

昨日、クラスでも小柄でおとなしい子供が、宿題を全部やってこなかったのを先生に叱り飛ばされたのに耐えかねて、とうとう自分の算数のノートを真っ二つに引き裂き、床に投げた。その子はそのまま家に逃げ帰ろうとした。

そのとき、アンカラママはボランくんをトイレに連れて行っていたが、教室に入ろうとしたら、修羅場の声が聞こえてきて、たちまち回れ右をして、ボランくんを校内散歩に連れ出したのだった。

中で何が起こっていたのかというと、先生の言葉を借りると、「戦争」が起こっていたとのことだった。

ボランくん、あなたが勇気を持って出てこようとしている世界は、こんなにもつらく、うるさく、居心地が悪い。



ボランくんは、今日は学校に着いて先生の授業が始まったとたん、「帰りたい」とジェスチャーで伝えてきた。

ジャンパーをかけてある場所を指差して、訴えてくる。

ボランくん、私はあなたのお母さんじゃないんだ・・・午前中は帰られないんだ・・・

「あんたは私をバカにしてるの?宿題をしてこなくて済むと思ってんの?前で立ってなさい!!」先生の叫び声が聞こえてくる。

悲しそうに罰を受けるこども。

何度も何度もジェスチャーするボランくん。だんだん怒りが高まってきた。

あと10分でチャイムが鳴るけど、持ちそうにないな・・と思ったとたん、ボランくんがアンカラママの腕に激しく噛み付いた。

***********************

何も見えず、何もわからず、自分の世界にいるほうが、この子にとっては幸せなんだろうか。

つい2ヶ月前に、「抗うつ剤」が処方されたのに、今度は学校に「適応」するために、鎮静剤を飲まされる日が来るんだろうか。

アンカラママは、担任の先生に、どんぐりのこと、宿題のことは、最後の日(5月末)に伝えるつもり。

今は、ボランくんを「善意でクラスに受け入れてもらっている」立場上、何も言えない。

私にもこんな子供がいるんです

今日はボランくんを療育に連れて行く日。

朝、バスに乗ると、「ここに座らせなさい」と手招きする婦人がいる。

「あなた、ウズベキスタンの人?」
「いえ、日本人です」
「日本人?まあ、日本なの、日本はいいところだって言うわね・・」
中央アジアの言葉はトルコ系だが、外国人であるアンカラママにはわかりずらい。
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、トルクメニスタンの人たちは、トルコにもかなり住んでいる。日本人と顔立ちが似ている人もいて、ときどき同郷人と間違えられて、声をかけられる。
「あなた、トルコ語がお上手ねえ・・この子はあなたの子?」
「いえ、私はつきそいをしてるんです。学校で講師をしてたんですが、学校に何人かこういう子たちがいて、ほったらかしにされていて、私も何もしてあげることができなかったので、少し経験をつみたいと思って。先生の中にも、なんとかしてあげたい、と思っている方もおられるんですが、みんな知識がなくて」
「そうなのよ・・学校の先生は何も知らないし、何もしてくれないわよ・・私にもこんな娘がいるのよ。ぱっと見るだけじゃ、普通の子よ。でも、勉強は全くできないの。座っているだけよ。14歳で、高校の支援クラスにいるけど、高卒の学歴がほしいから行かせてるだけね」
ご主人は既に定年なので、家にいるそうで、お母さんは住み込みの家政婦の仕事をしているのだという。

ああ・・みんながんばってるんだ。

帰りのバス。扉まで乗客をぎゅうぎゅう乗せたまま停留所にきた。
何人か降りる客がいたので、苦しいのだが乗せてもらう。
ボランくんは乗り物が好きで、バスにのるとおとなしくしている。
運転手がサイドミラーを見る邪魔になってはいけないと思い、ボランくんを支えて後ろに下がろうとすると、運転手が
「ラクにしてあげなさい。大丈夫だから。」と声をかけてくれる。

ときどき横目でボランくんを見ていた運転手が、
「僕にもこんな息子がいるんだよ。ADHD(注意欠陥・多動性障害)なんだ」と話しかけてくる。
「君の子はおとなしいね。僕の子は、バスの中でじっとなんかできないよ」
「この子は自閉症なんです。バスが好きなんで、バスの中ではご機嫌ですよ」
サングラスをかけた運転手は、にっこりした。

アンカラママはほほえんだ。発達障害の子の親だけが、直接かかわっている者だけがわかる親近感、苦労、仲間意識。
普段は、他人に手を出さないように、気をつかい、緊張し、見張らなければならない。
偏見や疎外感を感じることもある。
他人に無邪気に手を出すボランくん、手に力が入っているときは、つねってしまう。
子供に寛容なトルコ人でも、驚いて逃げるひともいる。

驚かない人もいる。そういう人は、たいてい、周囲に発達障害の子供がいて、存在に慣れている。
じろじろ見るのは失礼、と目をそらしたり、見て見ぬふりをする必要はない。
愛情を込めて、見つめ、質問してくる。
子供を見るその目は、限りなくやさしい。

お母さんにどこまで介入する?

ボランくんのお母さん「週末はショッピングモールに行ってたんだけど、今まで恐がって見向きもしなかった乗り物に乗りたがって、びっくりしたわ。初めていくところでも、ズンズン歩いていくのよ。ペットボトルのふたも、自分で開けるようになったし・・やっぱり、薬のおかげよね。あなたに言われて、抗うつ剤はやめたけど、土日は飲ませることにしたわ」

お母さんが運転中のおしゃべりだったのだが、アンカラママは空いた口が塞がらない。

アンカラママが咄嗟に反論できないうちに、お母さんはアンカラママとボランくんを、学校近くの道で下ろして、職場に行ってしまった。

この人は、ボランくんの変化を、100%薬の影響と思ってるんだ・・・

土日だけ飲ませるって、そんなやり方アリかい。いや、ないでしょ。
それでなくても、薬をやめた先週頭は、昼間からアクビばかりしていたってのに。

目に見える副作用だけでも、食欲が増えて、喉も渇くらしいのが明白なのに。

抗うつ剤飲んだら、いきなり滑り台が滑れるようになるんかい。
フタが開けれるようになるんかい。
毎日毎日、手を持ってあげて、スティック糊のフタを開ける練習をしたからなのに・・・

このお母さんは、今まで栄養剤しか飲ませておらず、食事も手作りで、健康志向の人だ。
だから、抗うつ剤も、すんなりやめてくれたのだが、今回はどうする?

お母さんも、ボランくんが積極的になるためのトリガーになるように、と言ってたのに、あまりに効果があるように見えたもんだから、もっと飲めば、という望みが出たのだろう。

アンカラママが反対しても、当然お母さんの考えが優先されるし、アンカラママには話さず、薬を飲ませるかもしれない。

アンカラママは、自閉症は水銀・農薬・放射能など環境要因がある、と思っているので、薬に入っている保存料の水銀がどんなに微量でも与えたくない。ボランくんもアレルギー体質の子。普通の子よりも、敏感で反応が強く出る。神経系に強く影響してしまう。

まして、トルコでは、薬の服薬量が多く、薬によっては、日本の服薬量の3倍を超えるものもある。(日本大使館の数年前の医務官は、処方される薬を半分にして、ちょうどいいと言われていた)アジア人と白人の、効果的な薬の量は違うそうだが、それにしても多い。

かつての水俣病で、汚染された魚を食べておらず、胎児のときに、胎盤を通して微量の水銀を体内に入れてしまった子供に、自閉症そっくりの症状がでていたそうだ。当時は自閉症という病気は日本では認識されていなかった。

どんぐりの授業はヒミツ

先月より、小2クラスで、どんぐりをしている。

担任の先生は、後ろの席でスマホをいじっているのだが、ラクしてるのが後ろめたいのか、子供たちには「アンカラママが来て授業してるのは、誰にも言っちゃだめよ」といい含めているのだという。

「他の先生たちが、うちにも来て、と言い出したら、あなたが大変でしょ。まあ、子供のことだから、言っちゃうかもしれないけどね」

本当は、他の先生たちにも、見学に来てほしいのだが、公立で無資格の人間が定期的に授業を行うのは、もちろん禁止なので、ややこしい問題が持ち上がらないとも限らない。

田舎の学校なら、問題にもならないと思うのだけど。

金曜日、休み時間に、小奇麗な年配婦人が、上の階の4年のクラス(アンカラママは普段このクラスにいる)に現れた。2年の女の子を1人連れている。

「私はこの子の祖母です!うちの孫に、授業をしてくださってありがとうございます!孫はあなたの授業が大好きで、家でその話ばかりするんですよ。私も、元数学教師です。引退いたしましたが。孫に、ぜひあなたと写真を撮ってほしいとせがまれまして、お邪魔いたしました。」

2年の女の子は、エヘヘ、と笑っている。
先生の言いつけを忘れて、どんぐりの授業を漏らしましたね・・というか、子供からしたら、何でヒミツなのか、わけがわからないだろう。

ボランくんはバナナを食べている最中で、おとなしくしてくれていたので、写真撮影は無事終了。

公立小日記

小4担任の先生「ヨンジャは今日も来ていないの?彼女の家のあたりも破壊されたらしいわね。心配だわ」

ヨンジャは、浅黒で快活なロマの少女である。

彼女の家族が住んでいたスラムは、違法建築だったので、今週、アンカラ市当局に破壊された。

「シェンムズ、あなたの所は大丈夫なの?あなたのうちも破壊されるの?」
ロマのシェンムズ少年は、うつむいた。

この地域は、中流層が住む高級住宅街として開発が続く。
ところが、空き地に違法スラム街が形成されてから、公立学校から生徒が私学に流出した。
今ではクラスの生徒数は10人ほどしかいない。人口が500万近いアンカラで、異様な有様になっている。

先生も、保護者たちも、恵まれない子供たちに古着や学用品を持ってきたり、昼食を分けてあげたり、なんとか学校を続けさせようと救いの手を差し伸べている。しかし、住むところまで用意してあげることはできない。
********************

小4社会の授業を聞いているアンカラママ。
今週のテーマは、消費者保護と権利について。
消費者センターに、苦情を訴える方法を授業で習っている。
実際に苦情の手紙を書く練習をしている。

どうして小学校でこういう内容が入ってくるのか、というと、父兄を啓発する、という目的も大いにあると思われる。
そのほか、7年生では、数学で利子の計算方法を習うとか、日本と違うカリキュラムがある。

重度自閉症の11歳お子さんのお世話 3ヶ月

アンカラママ「ボランが公園で遊んでてズボンを破ったんですけど。」
お母さん「まあ、はじめてのことね。今まで服が破れたことは一度もなかったわ。小さくなった服は、全部他人に差し上げていたのよ」

アンカラママが来る前までは、公園で遊ばなかったボランくんが、今では公園が大好きに。
回転遊具を最初は恐がって、近寄ることもなかった。アンカラママが1週間くらいかけて、少しずつ触らせて、抱っこして一緒に座ったりして、ようやく乗れるようになった。
今では遊具の中で笑いながらごろごろ転がっている。
滑り台もOKに。ブランコは、お尻が入らん・・
高いところに上がるのを覚えたボランくん。家でも学校でも、いすに上って立ってみたり、机にのぼってみたり。

近所に住んでるおばあさん「ボランは、テレビの前で何時間でもおとなしく座っているような子だったんだよ。何の反応もないし、何の興味もなかった。それが、今では、ボランはまるで普通の子みたいになったよ。普通の子が3-4歳のころにやることを、今始めたんだよ。何でも触りたがるし、何でも開けたがるんだ。この間、観葉植物の植木鉢をひっくりかえしたんだよ。家族のハミガキを、全部ひねり出したり、棚の中を全部放りだしたり。これで、口がきけるようになったらねえ・・・」

ボランくんの家は、割れ物など飾り物だらけ。とても子供のいる家とは思えない。洗面台も、飾り物がどっさり置いてある。
アンカラママは、家に行くと、一通りそれらを片付けてしまう。

3ヶ月前  おもちゃに興味なし
今     「炎男」など、名前をつけた人形(の後ろにいるアンカラママ)と話をする。(簡単な はい、いいえ程度)
       車を動かす。
       ままごとを理解しはじめた。実際に、サラダなど一緒に作ったりすることで、何の模倣なのかわかりはじめた。
       かくれんぼを理解しはじめた。

3ヶ月前  勉強ばかりさせられている子だった。内容は簡単なカード-単語のマッチングレベルから進歩していない。
今     遊ぶほうにシフト
       お母さんから渡されるワークプリントは、(しょうもない知育ばかり)アンカラママがマシーンすることもあり
 
お母さん「ボランに薬を飲ませたのは、それが目的だったのよね。自分に自信をもって、行動的になるきっかけになるようにってことで。」
抗鬱剤プロザックは、もうやめてもらったが、お母さんは、ボランくんの変化を、薬の影響と思っている。

アンカラママは、どんぐりのことは話してない。
即効性を求められたり、過剰に期待されても困るのと、アンカラママが今まで軽度の自閉症の子しか見た経験がないから。

アンカラママは、おだやかに、やさしく、短く、簡単な表現で話しかける。
そもそも、そんな風にしかトルコ語を話せない。
よく、人にも言われる。子供が話しているみたいだと。

お母さんは、早口の命令口調でボランくんに話す。
ボランくんの用事で仕事場を離れていても、いつも携帯で部下に指示を出している。
ボランくんが奇声を上げると、目を吊り上げて怒る。
怒ると、ボランくんはおとなしくなる。
もっとボランくんを受容して、と言うことは、難しい。

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アンカラママ

Author:アンカラママ
トルコ エスキシェヒル在住

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