競争の果てに

以下はトルコのある私立高校の、SBS全国実力テストの結果により、受けられる学費免除の割合の広告である。

ある私学のSBS成績優秀者の学費減免率

大体お分かりになると思うが、合計点により、細かく割引率が設定されている。
大学入学実績を上げるために、中堅の私立校間で優秀な生徒の獲得合戦が繰り広げられている。

トルコでは、私学は、政府から援助が来るどころか、学費に間接税をかけられるくらいで、一般の人には手が届かないほど学費が高い。しかし、先進国には及ばないとはいえ、環境は公立とは比べ物にならないほど整っているのだから、子供が成績優秀なら行かせてやりたい、と親が思うのも無理はない。

このような、テスト結果による割引システムは、小4くらいから存在する。そこで、低学年から、子供の尻を叩いて、成績をなんとかあげようとする親が出てくる。

こうなると、子供はニンジンをぶら下げられた馬のように、走り続けさせられることになる。
入学後、成績が下がると、学費減免が取り消されるのは想像に難くないから、親が学費を払えないとなると、即退学であろう。

さて、このような学費減免システムは、大手進学塾にも存在する。

そして、実績を出した成績優秀者は、新聞はおろか、街中の看板広告にまで実名と顔写真が載って、宣伝塔となるわけだ。

普段は海外に住んでいるトルコ人の秀才生徒が、SBSだけ受けにトルコにやってくる。そして、全国何位の成績をとった、と広告に載る。その塾に通った実績もないのに、である。塾側と取引があるとささやかれている。

また、毎月の模試だけ受けていた秀才生徒が、その塾出身として新聞に載り、翌日には本当に通っていた塾の広告に出たので、批判にさらされた。子供たちを利用する大人たちの思惑は、とどまるところを知らない。

昨年まで、SBSで満点を取った生徒は全国で十数人だったので、その生徒を擁する私学や塾は、「うちの生徒が全国トップの成績を取りました」新聞で誇らしげに掲載していた。ところが、教育省が、今年はSBSの難度を下げたため、満点を取った生徒が、全国で1000人を超えてしまった。そこで、「うちの生徒が全国一番です!」という教育機関の広告が、大量に新聞に出ることになり、人々の失笑を買った。

何でこんなに人々がSBSに関心を持つのかというと、親戚づきあいが盛んなお国柄もある。中1~中3まで行われていれば、親戚の誰かがSBSを受けているのだろう。試験が行われた夜や、結果発表の日は、当事者の家に親戚中から電話がかかってくるのだから、親もラクじゃない。大学入試でもそうだ。

2007年度に開始された、中1から中3までの3回のテストの結果によって高校入学の持ち点を決めるシステムであったSBSは、批判を浴び、今年度を持って廃止された。(今年中1だった生徒は中3まで継続)

以前の一発勝負の高校入試では、知識偏重型だったのが、SBSでは思考力重視に変わったのだった。大手塾の看板や問題集の表紙には「SBS対策」の字が躍った。

保護者は危機感を抱き、子供が低学年のうちから塾や補習に行かせる家庭が激増した。経済力のない家庭は嘆き、子供はモチベーションを失った。学力差が大幅に広がり、学校現場は厳しい評価にさらされた。

昨年度まで、SBSの結果(県別結果と順位および成績優秀者)をHPに掲載していた教育省は、今年は「SBSは習熟度を見るためのものであり、ランク付けはそぐわない」と掲載を見送った。

中3の一度だけのテストで、高校入学の資格を決めるのは不適当、との名分で始められたシステムだったが、PISAの結果に肝を煮やした教育省が、学力が足りない子供たちを、早期から勉強に駆り立てるのが詰まるところの目的だったのではないか。

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